大判例

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高松高等裁判所 昭和23年(ネ)1号・昭23年(ネ)4号 判決

被控訴人(反訴控訴人)高岡栄は控訴人(反訴被控訴人)本田亮蔵の占有にかかる愛媛県西条市大字船屋楠谷甲乙漁場及び同所子の谷甲漁場に定置している桝網を各撤去し且つ爾後右両漁場内に立入つて漁業をしてはならぬ。

控訴人本田亮蔵その余の請求を棄却する。

反訴控訴人高岡栄の控訴はこれを棄却する。

被控訴人(反訴控訴人)高岡栄の反訴はこれを却下する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを二分しその一を控訴人(反訴被控訴人)本田亮蔵の負担としその一を被控訴人(反訴控訴人)高岡栄の負担とする。

此の判決は控訴人(反訴被控訴人)本田亮蔵勝訴の部分に限り担保として金参千円を供するときは仮りに執行することを得る。

二、事  実

控訴代理人(反訴被控訴人)は原判決中控訴人勝訴の部分を除きその余の部分を取消す、被控訴人は愛媛県西条市大字船屋楠谷甲乙漁場及び同所子の谷甲漁場に定置した桝網を撤去し且つ爾後楠谷漁場及び子の谷漁場に立入り漁業をしてはならぬ、被控訴人は控訴人に対し昭和二十一年四月七日より本判決執行済にいたるまで一日金三百円の割合による金員を支払え、被控訴人の反訴請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする、との判決並びに担保を条件とする仮執行の宣言を求め反訴控訴人の控訴に対し控訴棄却の判決を求めた。

被控訴(反訴控訴人)代理人は本件控訴を棄却するとの判決を求め、反訴控訴代理人は原判決中反訴控訴人勝訴の部分を除き取消す、反訴被控訴人は反訴控訴人に対し昭和二十一年六月十六日以降反訴被控訴人が愛媛県西条市大字船屋楠谷丙漁場及び同所子の谷乙漁場に設置した反訴被控訴人の定置網を撤去するまで壱日金百三十円の割合による金員を支払え、訴訟費用は第一、二審共反訴被控訴人の負担とするとの判決並びに担保を条件とする仮執行の宣言を求めた。

当事者双方の事実上の主張は控訴人(以下第一審原告と略称する)代理人において本訴は侵奪された占有の回收並びに占有妨害の停止を求めるにあると述べ被控訴人(以下第一審被告と略称する)代理人において第一審原告と白石岩夫との間の漁業権賃貸借契約は契約書の作成もなく権利証(漁業権登録済証)の引渡しもないから不成立である。仮令有効に成立したとしても第一審原告は賃料滞納のため白石から昭和二十一年三月九日附を以て賃貸借契約を解除されたのみならず第一審原告は当時事実上賃借権を放棄していたとの主張はいずれも撤回すると述べた外は原判決事実摘示と同一であるからこゝにこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

原審証人松本歓治、川上元吉、当審証人星加清松、大石定次の各証言に原審並びに当審における控訴人(第一審原告)本人尋問の結果を綜合するときは第一審原告は昭和十六年二月頃訴外白石岩夫から愛媛県西条市大字船屋楠谷漁場(桝網設置場所四ケ所)同所子の谷漁場(桝網設置場所三ケ所)における漁業権を存続期間二十ケ年の約で賃借してその引渡を受け(右漁業権は訴外白石岩夫が昭和十四年七月十日附愛媛県知事から同県指令新第三二〇号乃至第三二五号を以て免許を受け同日その登録を了したものであることは当事者間に争がない)爾来第一審原告において右漁場に定置網を設置しこれを使用占有して来たこと(但し冬季は網を揚げ漁獲作業を休んでいたが竹はそのまま漁場に立てゝあつた)を認めることができる。原審証人川上虎吉の証言及び原審並びに当審における第一審被告本人尋問の結果中右に副わない部分は採用しがたく他に右認定を覆すに足る証拠はない。然るところ第一審被告が昭和二十一年四月四日右楠谷漁場に、同月七日子の谷漁場にそれぞれ定置網(桝網)各一統を設置したことは第一審被告の争わないところであり、しかもそれが第一審原告の意思に基いてなされたことについては何らの主張立証なく、むしろ原審証人松本歓治、当審証人大石定次の各証言及び原審並びに当審における第一審原告本人尋問の結果によれば第一審被告は第一審原告の意思に基かずして突如右の網を設置したことを認め得るから第一審被告の右所為は前記漁場に対する第一審原告の占有を侵奪し且つ妨害したものといわなければならない。第一審被告は昭和二十年十一月二十一日訴外白石岩夫から本件漁場における漁業権の譲渡を受け、昭和二十一年三月十一日その移転登録を受けたから、たとい第一審原告において右訴外人から本件漁業権を賃借していたとしてもその登録を経ていないのだから、これを以て第一審被告に対抗し得ないと抗争するけれども占有の訴は本件に関する理由に基いて裁判することを得ないことは民法第二百二条第二項の明定するところであるから占有の訴に対し防禦方法として本権に関する主張を為し得ないものというべく従つて第一審被告の右抗弁は許されないものといわなければならない。

されば本訴請求中第一審原告が右漁場の占有権者として第一審被告に対し同人の設置した右定置網(桝網)の撤去並びに右漁場に立入つて漁業をすることの差止めを求める部分は正当であるといわなければならない。

併し第一審原告の損害賠償請求の点については同原告提出援用のすべての証拠によるも同原告主張の如き損害のあつたことが認められないから、その理由なきものとして棄却すべきである。

次に第一審被告の反訴について審案するに占有の訴に対し防禦方法として本権に関する主張を為し得ないことは前説示のとおりであるから、これと牽連する本権上の反訴を提起することは許されないものといわなければならない。然るに第一審被告は前記の如く本訴たる占有の訴に対し防禦方法として同被告が本件漁場における漁業権を訴外白石岩夫から譲り受けその登録を了した正当な漁業権者であると主張し、さらに反訴を提起しその請求原因として右漁業権取得の事実を主張し、該漁業権に基いて第一審原告に対し同原告の本件漁場に設置した定置網等の撤去並びに同漁場内に立入つて漁業をすることの禁止及び損害の賠償を求めるものであること第一審被告の主張に徴し明らかであるから、右反訴はいわゆる本権上の請求であるというべく従つて不適法であり却下を免れないものといわなければならない。故に第一審被告の本件控訴も理由がない。

よつて以上の判定と異なる原判決は変更すべきものとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十六条第八十九条仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 前田寛 近藤健蔵 萩原敏一)

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